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猟奇的な愛と執着心の終着点――SixTONES「Hysteria」の歌詞考察

 9月に行われた舞台「少年たち」で披露されたSixTONESのオリジナル曲「Hysteria」。10月5日放送のザ少年倶楽部で初披露され、歌詞の全貌が明らかになりました。

 歌詞をパッと見たとき、倫理観が欠落した、閉鎖的で歪んだ世界が浮かび上がり、それと同時に「Hysteria」は歌の主人公のことを指すのではないかと思いつきました。ややアブノーマルかと思ったので日を置いてあらためて歌詞を眺めてみたものの、ひとつの解釈としてはあってもいいんじゃないかという思いが深まっていく一方。

 そこで、英語詩の部分は文法をあまり考えない超訳をしつつ、和訳という名の歌詞の再構築をし、自分なりの解釈を書いていきます。あくまで個人的な、ご都合主義かつ想像力が暴走した解釈です。こういう読み取り方もあるんだなくらいに受け取っていただければと思います。文字数はページ番号がわりに書きました。分量把握の参考にしていただければと思います。

 

 ※タイトルにもある通り、歌詞から「独占欲」「執着心」「猟奇的な愛」を柱に解釈していくので、気分を害する表現が出てくる可能性があります。以下、特に注意書きはしません。閲覧は自己責任でお願いします。

 

◇目次 

◆歌詞

◆和訳を含めた歌詞の再構築

◆考察ー大まかな流れ

 1.主人公と君の関係性(約1000文字)

 2.君に対して「恋人のように」、「紳士ぶって」振る舞う主人公(約1300文字)

 3.猟奇的な愛が牙をのぞかせる瞬間(約1300文字)

 4.倒錯的な世界に溺れる主人公(約2200文字)

 5.猟奇的な愛と執着心の終着点(約1300文字)

◆考察ー部分的な要素

 1.冒頭の音について(約1300文字)

 2.「Green light」「Yellow light」の解釈(約300文字)

 3.単語/フレーズの繰り返し=主人公の執着心(約300文字)

 4.心中ソング/独占欲の果てに殺すソング/不倫or浮気ソング(約700文字)

 5.カニバリズムの要素(約700文字)

 

◆歌詞

I've been looking for ya, Wanna get to know ya
Wanna be your man, I need your lovin', lovin', lovin'
Baby, I just wanna take you away,一人きりじゃFeeling so blue
Alright, いつでもCallin' your name
 
I got you baby, Let's take it so slow 深まっていくBlack night
いくら君を忘れようとしても
I just can't leave you alone, Ah
目と目が合えばYou give me butterflies
だから君以外 Uh 欲しくない, All that I want
肌に触れたYour lips, So red
I just can't get enough その甘いFlavor
いつもMissing you, Missing you
Give me a, Give me a green light
離さないで Cuz you drive me crazy
Hysteria
 
Will you be mine? Be my SixTONES Wow Wow
Will you be mine? Be my SixTONES Wow Wow
 
Girl, Just let me hold ya, Kiss me like your lover
We'll never be friends,
We keep on freaking, freaking, freaking
Baby I just wanna see you again,
その瞳がMake me insane
Alright, 染めてくMy world in pink
 
So listen baby, I'll break it down 何度だってRound & Round
夜の闇の中で探すけれど Your love will never be found, Ah
二人の部屋は まるでParadise
見え透いた未来, Uh 望まない All that I need
溺れてみたいYour tears, Your lies
I wanna get you now 滲んでくMake up
今もDigging you, Digging you
見えないYellow light, Yellow light
そうやめないで Cuz you drive me crazy
Hysteria
 
Will you be mine? Be my SixTONES Wow Wow
Will you be mine? Be my SixTONES Wow Wow
 
So beautiful, 熱く溶けるほどにGive me your love
I just keep falling for you, Can't get you out of my head
伏し目がちなYour smile もう二度と戻れない
今もLost in your eyes...
 
Hysteria
 
Will you be mine? Be my SixTONES Wow Wow
Will you be mine? Be my SixTONES Wow Wow

 

 

◆和訳含めた歌詞の再構築

君のことを探し求めてきた 君のことを知りたい
君の愛が必要なんだ だから君の恋人になりたい
ねぇ、君のことを連れ去りたいよ だって一人きりじゃ憂鬱で、気分が塞いじゃうから
ほら、いつでも君の名前を呼んでるよ

 

君を捕まえた まぁ、ゆっくりいこうか 夜はこれからなんだからさ
いくら君を忘れようとしても 君を一人きりになんてできやしなかった
君と目が合うとこんなにも胸がざわめくんだ だから君以外欲しくない 君だけが欲しい
肌に触れた君の唇は赤らんでいるね まだ君のこと全然味わえてないよ
いつも君のことを手に入れられない ねぇ、「いいよ」って言って
離さないで だって僕を虜にするのは君だけなんだから

 

僕のものにならない? 君は僕の宝物だから

 

君のことを抱きしめさせて それで、キスしてよ 君の恋人にするようなキスを
僕たちは友だちなんかになれないよ だって中毒になったみたいに、気がおかしくなったままだ
いっそのこと永遠のさよならをしてしまいたい その瞳が僕のことを狂わせて、世界を真っ赤に染め上げていくから
だから聞いて愛しい人 ちゃんと教えてあげるよ 何度だって、飽きるほどに
夜の闇の中で探すけれど あぁ、君の愛はどうしたって見つけられないな
二人の部屋はまるで楽園のようだ 見え透いた未来は望まない 君だけが欲しい
君の涙と嘘に溺れてみたい やっぱり今、君を僕だけのものにしたい 紳士ぶっていた自分が滲んで完全に溶けていく
今も君が好きで好きでたまらない 君のこと、骨の髄まで知りたい 「やめて」なんて言うだけ無駄
そうやめないで だって僕をこんなに狂わせたのは君なんだから

 

とてもきれいだ 熱く溶けるほどに君の愛をちょうだい
今この瞬間も恋に落ちてるんだから、君のことを忘れられそうにない
伏し目がちな君の笑顔 もう二度と戻れない
今も君の瞳に夢中で、とらわれたままなのに

 

 

◆考察ー大まかな流れ

 まず、歌詞を見て感じた全体の印象と、その根拠になりそうな部分をざっくりと。

 

 この歌の主人公に対して、強い執着心と狂気を感じたのが考察のスタート地点でした。なお、「Will be mine?  Be my SixTONES」については特に考えずに考察しました。

 以下、順を追って考えを書き連ねていきます。

 

 

1.主人公と君の関係性

 主人公と君は決して近い距離にいるとは感じませんでした。根拠は3つ。

 1つ目は「I've been looking for ya」。もし近くにいるなら「探し求めてきた」というのは違和感があります。2つ目は「We'll never be friends」。もし、元々何かしらの関係性があり、その変化を表現するならば「友だちに戻れない」などという英語になるほうが自然かと思うんです。この歌詞はそのまま訳すと「私たちは決して友だちになれない」。だから、元から友だちというわけではないんだろうなと。

 友だちじゃないなら恋人という可能性は、と思うのですがそこで挙げたいのが3つ目の根拠「Kiss me like your lover」。もし恋人同士なら「あなたの恋人にするみたいに私にキスをして」なんて言わないですよね。だから、恋人である可能性も消えました。

 友だちでも恋人でもないなら、一体主人公と君の関係性は何なんでしょうか。

 個人的に一番推したいのは、ネットストーカーのような主人公とその対象者である君という関係性ですね。冒頭のブロックに「I just wanna take you away, 一人きりじゃ Feeling so blue」とあります。「あなたを連れ出したい 一人きりじゃ憂鬱だ」ということですが、「探し求めてきた」から繋げると、これまでは主人公と君に物理的距離があったのではないかと思いました。SNS、盗聴器、監視カメラ、なんでもいいのですが、流れ的にSNSあたりでしょうか、そんなようなメディアを介して主人公は君を監視してきた。

 そして、監視するだけでは満足できずついに「Wanna be your man」、「あなたの恋人になりたい」と思うようになります。「I need your lovin' lovin' lovin'」と執拗に繰り返すほど君の愛を求めるようになる。「いつでもCallin' your name」は、「いつでも君の名前を呼んでいる」ですが、その後ろには「それなのに気づいてくれない」という気持ちが隠れているように感じました。距離があるからこそ主人公の声は君には届かないこと、そして主人公が君との距離感を見誤っていることを表現しているのかなと。まさに主人公の病的な部分、狂気です。

 

 関係性の話とはやや逸れますが、主人公の狂気に少しふれたので、ここで歌詞と演出に目を向けてみます。イントロ~「いつでも Callin' your name」までは6人とも黒い幕に包まれ、顔とグローブを付けた手だけを出していました。「I got you baby」~「離さないで Cuz you drive me crazy」で足も出すようになり、「Hysteria」で一斉に幕を剥ぎましたね。

 黒い幕の動きは、主人公の狂気の表出度合いとリンクしているのではないかと考えました。SixTONES自身が主人公の「狂気」だとしたら、黒い幕はそれを覆い隠す物。つまり、序盤の主人公は狂気の片鱗しか見せていなかったものの、次第に崩れていき、1番の「Hysteria」で全てをさらけ出す、狂気が理性を上回るわけです。

 

 

 2.君に対して「恋人のように」、「紳士ぶって」振る舞う主人公

  膨れ上がった独占欲が弾けて、「I got you baby」、主人公は君を捕まえます。この場面以降、主人公と君は同じ空間にいて物理的に接触できる状態にあると捉えました。

 狂気を孕んだ愛を持つ主人公ですが、最初から君にそれをぶつけるようなことはしていません。むしろ、健全な愛を注ぐ恋人のような態度を取っているように感じました。その根拠は3つ。

 1つ目は「Let's take it slow」。あんなに「あなたの愛が欲しい」と焦がれていたはずなのに、性急に求める様子はなさそうです。「ゆっくりでいい」なんて、余裕すら感じさせます。どこから生まれる余裕でしょうか。「深まっていくBlack night」、時間のことなのか、それとも軟禁/監禁状態にあり、文字通り「捕えて」いるからなのか。「Black night」は単純に時間帯だけを指すのではなく、主人公と君のいる空間が暗いものでその暗さがこの先深まっていくことを暗示しているのではないかと思いました。

 2つ目は「いくら君を忘れようとしても I just can't leave you alone」。「忘れる努力はしたけど、君を一人にするなんてできない」なんて、君に対する言い訳をします。まるで、想い合う恋人同士が何らかの障壁に阻まれて別れざるを得ない状況のようですね。「君を一人にするなんてできない」というのは、「君は僕がいなかったら寂しいだろうから」といった本音の裏返しに取りました。

 3つ目は「目と目が合えば You give me butterfries だから君以外 Uh 欲しくない All that I want」。「目と目が合えば あなたは私をドキドキさせる」、目が合うだけ胸がうるさく高鳴るなんて運命だ、と言っているようにすら感じさせます。それくらいの飛躍をこの主人公はしそうかな、と。

 ただ、2つ目と3つ目の部分は主人公が自分の行為を正当化するために「君のせいだよ」なんていう責任転嫁をしているようにも読めますね。後のブロックでわかってきますが、主人公は自らのあらゆることに自覚的だと思っています。

 

 次に「紳士ぶっている」というのはどういうことか。

 想いとは裏腹に「肌に触れた Your lips」と、まずキスをさせるところから始めています。「I just can't get enough その甘いFlavor」と物足りなさを感じつつ、「いつも Missing you, Missing you」、「いつもあなたに会えなくて寂しい」なんて甘えるようなことを言い、「Give me a, Give me a Green light」、「ゴーサインをちょうだい」とお願いをする。

 甘えて許可をねだるなんて一見相手想いにも見えますが、「Give me a Green light」と君に選択肢を与えていません。あくまで、主人公にとっては自らの願望を叶えることが最優先事項。でも、まだ「恋人のように」振る舞いたい主人公はこの先にしようとすることに対して君の合意が欲しいと思っているんです。無理矢理ではただの犯罪になってしまう。でも合意があればその限りではない。狂気の中にも理性が見え隠れします。

 

 この部分は「恋人」「紳士」などというワードをメインに読み取ったので、「嫌がってばかりいてがっかりさせないで」という本音が「(僕の心を)離さないで」という言葉に姿を変えているのかなと感じました。また、二度出てくる「Cuz you drive me crazy」ですが、恋愛に没頭しているような思考の主人公に宛がうなら「あなたは私を夢中にさせる」のほうが適切なので、こちらの訳にしました。

 

 

3.猟奇的な愛が牙をのぞかせる瞬間

 おそらく2のときから時間は何日か進んでいます。それでも、「Girl, Just let me hold ya」と、主人公と君の精神的な距離が縮まった様子はありません。ハグさせてよ、キスしてよと相も変わらずお願いをしている。

 ただ、この直後から様子がおかしくなっていきます。「We'll never be friends」を、さらに意訳して「僕たち絶対にわかり合えないね」としましょう。主人公は自分の想いが通じると思いながら、君から合意を得ようとここまで紳士ぶってきました。でも、君はそれに応じる様子がない。だから、このフレーズに行き着く。ここでメッキが剥がれ始めます。

 その後に「We keep on freaking,freaking,freaking」とあります。「Freak」は動詞だと後ろに「out」をとって「(ショック、恐怖などで)異常な精神状態になる/(麻薬で)幻覚症状を起こす、興奮する」という意味になります。名詞だと「大ファン」という意味もあるのですが、この類語は「addict」=中毒者です。「Freak」は麻薬中毒のような意味と切り離せない言葉であると言えます。

 歌詞に戻ります。この「Freaking」は「Keep on」に続いているので、outはありませんが動詞の意味で取りました。「私たちは麻薬でも使ったみたいにとにかく興奮している」とでも訳そうと思いますが、ここはダブルミーニングになっているようにも思います。

 主人公はずっと焦がれてきた君と触れて好きにできるほど近くにいる。念願が叶い始めたことで、あり得ないくらいに興奮している。まるで麻薬中毒者がクスリをキメているかのように、常軌を逸したテンションの上がり方をしているのかもしれません。

 一方の君は、見ず知らずの主人公に捕らわれただけでなく襲われかけているという、信じがたいショッキングな出来事に直面してしまい、主人公に対する恐怖や行為そのものへのショックで頭がおかしくなっている。

 主人公と君の状態が違うと把握しているからこそ、「We'll never be friend」というフレーズが出てきたのかなと思いました。

 

 その後には、「I just wanna see you again」と続きます。「君とさよならしたい」という意味ですが、「See you again」は「またね」などという軽い言葉ではなく、「ここで別れたら二度と会えなくなるかもしれない」という重い意味を持っているそうです。

 狂気に満ちた主人公の言う「さよなら」は単純に物理的な距離をあける「さよなら」ではないと考えました。麻薬中毒のように気をおかしくさせるのは君の瞳なわけです(「その瞳がMake me insane」)。でも、気がおかしくなっているから君とはわかり合えないのかもしれない。それなら、いっそのこと今ここで自分の手で、君と二度と会えなくしてしまえばいいんじゃないか。そんな気持ちが「see you again」には込められているのではないかなと思いました。

 また、慣用句ではなく単語の意味だけで取って「again」を「次の人生」なんて表現して、「来世でも会いたいな」なんて超訳的な解釈も一緒に添えておきます。

 

 「in pink」はピンク色と訳したほうがいいのかなと思いつつ、この状況の「ピンク」は限りなく「赤」に近いショッキングピンクのような色だろうと考え、あんな感じに訳しました。興奮で頭に血が上っているなんて言いますよね。そのイメージです。ただ、正直もっとうまい訳し方がある気がしています。

 

 

4.倒錯的な世界に溺れる主人公

 「So listen baby~」からを一つのパートにしました。3同様、ここでも時間は経過していると解釈しています。

 軟禁/監禁状態で 主人公は君に呼びかけます。「I'll break it down 何度だって Round&Round」と。これは、なぜ今こんなふうに身体を自由を奪っているのかという理由を説明する、と取りました。気持ちが君に伝わっていないから君はそっぽを向いたままなんだ。わかってくれれば絶対に振り向いてくれる。だったらいくらでも気持ちを教えてあげる、という意味が込められているように感じました。

 次の「夜の闇の中を探すけれど Your love will never be found」というフレーズが、その結果を示しています。君を捕えて、次第に明度を無くしていくような空間の中で行為を続けながら君の気持ちが主人公に向く兆しがないか探るけど、気持ちは向かないどころか「決して見つけられない」=存在しない。この先も君が主人公を好きになることはないと突き付けられます。

 

 そして「二人の部屋はまるでParadise 見え透いた未来 Uh 望まない All that I need」で、主人公の行動はすべて自覚的だったこと、狂気すらも熱に浮かされていたわけではなかったことがわかります。主人公が猟奇的であることが、ここにきてくっきりと浮かび上がってくる。

 「見え透いた未来」の「未来」は「We'll never be friends」の「will」、「Your love will never be found」の「will」を指しています。主人公と君の想いが交わらない、友だちにも恋人にもなれない。そんなことは最初からわかっていました。透けて見えるほどわかりきっていたことでした。

 さらに、今二人がいる部屋が楽園でもなんでもないこともわかっています。連れ去ったうえ、真っ暗な部屋で残忍なことをして、その結果、君がショック状態に陥っている。主人公の気持ちと君の気持ちは絶対に交わらないし、どんな関係にもなることができない。君にとっても主人公にとっても「絶望」の二文字しかない空間が、苦しみのない幸せな空間であるはずがないんです。だから「まるで」にしかならない。

 

 それでも尽きない独占欲と執着心が「All that I need」のワンフレーズに集約されています。想いが交わらない未来なんていらないと、主人公には君だけが必要だと。

 ここからは、主人公が倒錯的な世界、欲望に身を沈めていったように感じています。

 「溺れてみたい Your tears,Your lies」。主人公の行動に対して、君は嫌がる一方どうしても身体が反応してしまう部分があります。主人公には、君の理性と本能がせめぎ合う様子を見ていたい、その様子に溺れてみたいという思いがあるのかなと思いました。涙が本能で、嘘が理性。涙が理性で、嘘が本能。いずれにも取れると思いますが、ここは前者を推します。ここにきてもなお、抵抗するのが「嘘」だと感じていたら主人公がより一層猟奇的に見えるかなと思うので。

 

 「I wanna get you now」は、もう体を繋げてしまいたいというふうに読みました。その考えが浮かんできたことで、「滲んでく Make up」という状態になる。「Make ~ up」には「~を構成する/完全なものにする/~に化粧する」などという意味があります。何かを完全に作り上げていくイメージですね。

 省略された「~」を「me」にして、「Make me up」と読み取ると、2で触れた「紳士ぶっている主人公」の姿が立ち上がりました。一応、途中までの主人公はお願いしたり尋ねてみたりしていましたね。ひどく興奮した場面もありましたが、それはあくまで一般的な欲望を満たせることに対する喜びに起因するものと考えられます。

 ですが、この段階の主人公はもう「紳士」の欠片が「滲んでく」、つまり溶けてなくなっていく状態にあります。もう何も我慢できないほど、塗り固めた虚像が剥がれ、崩れ落ちていったんだろうなと。

 

 「今もDigging you,Digging you」は、体を繋げて奥深くまで知ろうとすることと、動きそのもの、二つの意味がかかっているのかなと考えました。「Dig」は「掘る」という意味に加え、スラングで「理解する/好き」という意味があります。「掘る」という言葉は主人公の動きそのものと重なりますし、それによって「理解する」=君を知るということにも繋がるのかなと。「今も」というのは、「I wanna get you now」を遂行したことを受けての「今も」かなと読んでいます。また、単純に「今も好きでたまらない」という意味でもとれます。

 「見えない Yellow light,Yellow light」は、主人公のもう後戻りするつもりはないという気持ちや、制止の声が耳に届かない状態を表現しているフレーズだと考えました。ただ、「Yellow light」を嫌がっているわけではないんです。続く「そうやめないで」はおそらく、「Yellow light」つまり「制止の声を上げること」を目的語にとっています。抵抗する様子は主人公の気持ちを高める材料にしかならない。

 一見、「やめてと言っても無駄」「やめてと言うのをやめないで」というフレーズは矛盾するように見えます。ですが、前者は制止の声が主人公にとって本来の意味を無くしていること、後者は制止の声が主人公にとって煽るような意味を持つことを示していると読めば、なんとかいける解釈なのではないでしょうか。

 ここの「Cuz you drive me crazy」は、主人公が自分の行動や思考、自分が「Hysteria」=病的に興奮していることに自覚的であることを汲んで「君が僕を狂わせるんだから」と取りました。「crazy」には、こんなふうに軟禁/監禁させて無理に体を繋げなきゃと思わせたのはつれない君なんだから、という気持ちが含まれているのではないかと思います。

 

 

5.猟奇的な愛と執着心の終着点

 4までの異常な興奮状態は落ち着いた印象です。ただ、主人公の異常さがなくなったわけではなく、変わらずにあります。

 「So beautiful」の一言は、主人公が恍惚としている光景が浮かびました。願望を叶えて、満足している状態で目にする世界はさぞ美しいものだろうと思います。おそらく、このブロックでは君も抵抗する気力を無くして闇落ちしているんだろうなと推測しました。「伏し目がちな Your smile」は、泣くのも怒るのも全て諦めた末に思わず笑ってしまうような表情かなと想像しています。もしくは、主人公には君が笑っているように見えているだけか。

 

 「もう二度と戻れない」ですが、これはどこに戻れないと言っているのか。2つの取り方がある気がしています。1つ目は君を捕えて、体を繋げる前の世界。2つ目は君が死んでしまう前の世界。特に推したいのは2つ目の解釈です。

 「死」という発想が出てきたのは、「伏し目がちな Your smile」と「今も Lost in your eyes...」のフレーズがあったから。3つのフレーズがそれぞれ絡み合って、2つ目の解釈が生まれました。

 まず1つ目のフレーズですが、目が閉じ切らないまま亡くなることは全然あります。それを思い浮かべました。主人公に好きにされているうちに、プツっと命が途切れてしまったような、そんな感じです。

 そして2つ目ですが、これは一番最後の三点リーダーが肝だと思っています。三点リーダーはつなぐ記号です。つまり、文章はここで終わっておらず、何かしらが続くと解釈できます。続く文章の前に「...」の訳を解釈しますが、ここでは「なのに」と訳しました。「Lost in」は「夢中になる」という意味があり、そこに「Lose」の「迷う」という意味をニュアンスで付け足して「君の瞳の中で迷子になっている」=「夢中でとらわれている」としています。この二つを組み合わせると「今も君の瞳に夢中で、とらわれたままなのに」となります。

 「なのに」は逆接の接続詞です。「AなのにB」は、AとBが矛盾した内容であることを示します。歌詞に照らし合わせると、Aにあたる部分は「君の瞳に夢中で、とらわれたまま」になります。この内容と矛盾するものを考えると、瞳との距離がある状況を思い付きました。その状況はどんな場合に生まれるかというと、会えない状況に陥った場合です。会えない状況は、単純に距離を置くというのもありますが、この曲の中ではそれだとライトすぎます。

 そこで注目したいのが、このフレーズの前にある「もう二度と戻れない」、3で主人公が抱いた「I wanna see you again」=永遠のさよならをしてしまいたい、という気持ちです。これらを合わせると、命がついえてしまうことで会えなくなると考えるのが自然かなと思いました。

 君が死に、まぶたがちゃんと開かなくなってもなお、君の瞳に囚われている、夢中だと言い切る主人公からは、死に対する悲しみが感じられません。どちらかというと、瞳に狂わされるということができなくなったことに対する悲しみや失望を抱いているのかなと思いました。

 

 歌詞を最後までさらいましたが、一貫して主人公は狂っているというのが私の見解です。君が存在する限り、主人公の病的な興奮は収まらない。なぜなら君そのものが主人公の病的興奮の源だから。主人公の想いは、君が死ぬことでようやく終着するのかもしれません。

 

 

◆考察ー部分的な要素

 ここからは、部分的で上記はうまく混ぜ込めなかったものの、大筋考察の補強になった考察や、部分的な考察、別の解釈を書いていきます。

 

1.冒頭の音について

 イントロに入る前、いくつかの音が鳴ります。どんな音か答えはないですが、以下の3つに分けて考えました。

 ・鳥が羽ばたく音

 ・風が吹く音

 ・電流が流れる音

 この順番で音が流れるのは、自然(鳥)と人工(電流)の対比で君と主人公の距離を表現していると考えました。君が自然、主人公が人工ですね。象徴とするものが対極にあるという意味でも、主人公と君の間には埋めがたい距離があるのかもしれないと思いました。風についてですが、風は自然発生するものでもあり、機械で巻き起こせるものでもあるので、自然と人工の中間に位置するものかもしれません。

 音の流れる順番と音の内容は歌詞全体の流れともリンクしています。まず順番ですが、自然=君と主人公の関係性に何も手が加えられていない状態、人工=関係性、空間が作られた状態=まるで楽園のように感じる二人の部屋、となり、冒頭の音が関係性の変化を示唆していると取れます。

 

 そして内容ですが、鳥を君としてとったのには理由が2つあります。

 1つ目は、歌詞中にある「butterfries」の持つ「羽ばたく」イメージと「鳥」が共通しているということ。「You give me butterfries」は「あなたが私に蝶々をくれる」=あなたのくれた蝶々が胸の内を飛び回る=「ドキドキする」というふうに解釈したのですが、これを主人公と君に置き換えれば、蝶々をあげるのは君で、もらうのは主人公になります。蝶と君を紐づけて考えても違和感はないと思い、蝶と鳥を君のイメージとしました。

 2つ目は、鳥がバタバタと羽ばたくような音を立てていたこと。鳥を君のイメージとすれば、君が羽を激しく動かすような状態にあると考えられます。その状態が生まれるシチュエーションを想像したとき、歌詞の内容から「主人公に捕まり抵抗している状況/主人公に捕まりそうになりジタバタと暴れている状況」が思い浮かびました。一番最初に鳥のはばたく音がきていることは、歌詞のストーリーと照らし合わせても矛盾はありません。

 

 風の音の解釈はそこまで進んでいないのですが、鳥の羽ばたく音と入れ替わりで聞こえてきたので君が主人公に捕まったか、捕まった後に抵抗をやめたことを示しているのかなと思っています。また、電流の音と入り混じって次第に電流の音へ変化していくのですが、これは主人公が君の領域に踏み込み、次第に侵していくことを表現しているのかもしれません。

 電流の音を主人公ととったのには、電流の持つイメージが影響しています。電流というものは安全なものではありません。触れれば感電したり、痛みや苦しみを覚えたりします。君に痛みや苦しみを与える存在=主人公とすると、イメージがぴったり重なるのでこんなような解釈をしました。

 

 ただ、鳥の羽ばたく音と電流の音はもう少しポジティブにとれるとも思っています。比喩表現で「電流が走る」というものがあります。強烈な印象を受けたときなどに使いますが、代表的な使用として挙げたいのが恋に落ちたとき。「彼女を見て電流が走った」などと表現することがありますよね。これはそのまま主人公の心情になり得るのではないでしょうか。こう解釈したとき、鳥の羽ばたく音は自由気ままに、意識的にか無意識にか主人公を惑わすように振る舞う君を表現していると読むことができます。

 

 

2.「Green light」「Yellow light」の解釈

 歌詞解釈では主人公が君に求める言葉、君自身の言葉としてとりましたが、行動そのものが次第に危険に、過激になっていくことを示している可能性もあると感じました。信号は青、黄、赤の順番で灯っていきますが、歌詞も「Green」「Yellow」と順番に進んでいるんですよね。登場していませんが、まるで「Red light」に向かうかのように。

 また、大災害が起きたときなどに行うトリアージも同じ色分けになっていますね。一刻も早く治療すべき人、つまり危険な状態にある人が赤、その次に治療すべき人が黄、緊急の治療を要さない人が緑。こういった観点からも、ここの冒頭で書いた解釈があり得るのではないかと思いました。

 

 

3.単語/フレーズの繰り返し=主人公の執着心

 歌詞の中で印象的だったのが、単語やフレーズを繰り返す場面が多いこと。「lovin' lovin' lovin'」「Missing you,Missing you」「Give me a,Give me a」「freaking,freaking,freaking」「Round & Round」「Digging you,Digging you」「Yellow light,Yellow light」と7箇所ありました。繰り返すことでその意味を強調したり、テンポが良くなったりという効果を狙っているのかもしれません。

 ただ、単語/フレーズの繰り返しというのはネガティブに言いかえると「しつこさ」になります。この歌の主語は一貫して主人公です。つまり、繰り返している=しつこさを持っている人は主人公であると解釈できます。しつこさの対象はもちろん君です。こういうところから、主人公は君に対してかなりの執着心を持っていると思いました。

 

 

4.心中ソング/独占欲の果てに殺すソング/不倫or浮気ソング

 歌詞解釈では君が死んでしまったという解釈に自然と落ち着きましたが、タイトルの通りほかにも3つの解釈があり得るのではないかと思っています。いずれの解釈も全体を通してするのが難しかったので、ここでまとめて書きます。

 心中ソングの根拠は「今も Lost in your eyes...」です。「...」とここだけ文章が途切れているような印象を受けました。「伏し目がちな Your smile」が亡くなってしまった君の状態だとしたら、それを見ながらすでに違う世界(=死後の世界)にいる君に想いを馳せている最中でこと切れた情景が浮かびました。君が死んだなら僕も死ぬ、といった感じです。実際はこのフレーズの後にも歌詞は続いているのですが、既出フレーズだったので考えには入れていません。

 独占欲の果てに殺すソングの根拠は「I just wanna see you again」です。主人公はわりと狂っているので、独占欲が強すぎるあまり自分の手で殺してしまいそうな気がしました。これについては、次の項目でも触れていますが阿部定事件における犯行の動機に近いものがあるかと思います。カニバリズムの一歩手前のようなイメージですね。

  そして不倫or浮気ソングの根拠は、「Girl,Just let me hold ya」~「We keep on freaking,freaking,freaking」です。「Kiss me like your lover」は主人公が不倫もしくは浮気相手だからこそ出る言葉だと思いました。また、「We keep on freaking,freaking,freaking」と私たち=主人公と君が一緒におかしくなっているのいうのは、不倫もしくは浮気している状況を共有しているからこそ出てくるフレーズに感じます。

 ほかにも「Missing you,Missing you」=君に会えなくて寂しいと言っていたり、「Wanna be your man」=君の男になりたいと言っていたり、自由に会えない関係性であることを示すフレーズが散らばっています。深められそうと思いましたが、長くなりそうなのでまた別の機会があったらそのときにでも。

 

 

5.カニバリズムの要素

 人間が人間の肉を食べる行動、または習慣のことをカニバリズムといいますが、歌詞の読み方によってはカニバリズムの要素があると感じました。

 「Your lips,so red」の赤は血を指していて「君の唇が血に濡れている」、その後の「I just can't get enough その甘いFlavor」はまさにそのまま。甘い味がするのは君の肉で、まだ食べ足りないということなのかもしれません。また、「I wanna get you now」の「get」は食べるという意味を持ちます。食べ始めたとしたら、「Digging you,Digging you」を君の体の中の中まで食べ尽くしたいくらいの訳をしてもいいのかな、と思います。

 カニバリズムという発想は主人公が強い独占欲を持っていると感じたところから生まれました。実際に起きた事件でいうと、昭和11年に起きた阿部定事件に近いものを感じています。女性が不倫相手の男性を殺害、局部を切断し3日後に逮捕されるまで持ち歩いていたという有名な事件です。彼女は殺害した理由を「彼を殺せば他のどんな女性も二度と彼に決して触ることができないと思い、彼を殺した」と話したそうです。これは歌詞の本筋で解釈した部分と重なるように思います。余談ですが、切断し持ち歩いていたのは、不倫相手の男性の体を持ち歩き、いつも側にいたかったからだそう。愛ゆえの狂気ですね。

 食べるという行為は栄養を摂取するための行為ですが、見方を変えれば栄養素を自分の肉体と一体化させる行為とも言えます。もしカニバリズムだとしたら、主人公の行動原理は君への強すぎる想いになるのかもしれません。君を想うあまり、君と一体化したくなったという感じですね。ひとつになることの究極です。

 

 

 以上です!ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。

 想定していたよりもずいぶん長くなったうえ、ずいぶんと偏りのある解釈になりましたが、「Hysteria」の歌詞とがっぷり四つに組み合えた感じがして満足しています。楽しかった。論理が破綻している気がしますが、気づいたら後でこっそり直します…

 書き終わるまでいろいろな方の解釈や和訳を読むのを我慢していたので、読み漁ってきます。わくわく!

 また、これを読んで興味がわいた方は、ぜひSixTONESの「Hysteria」をご覧になってください!テレビでしたら来月の少クラセレクションスペシャルでご覧いただけるかと思いますので、ぜひ!独特の世界観とパフォーマンスに圧倒されます。めちゃくちゃかっこいいです。

 

 それでは!